あのこは貴族 (映画)
https://www.youtube.com/watch?v=L71xzlq34kw
公開 : 2021年2月
制作 : 東京テアトル
上映時間 :124分
同名の原作『あのこは貴族』を何がきっかけで手に取って読んだのかは忘れてしまったのだけど、とにかく読んでみてとても好きだったのと、監督の岨手由貴子が数年前に撮った『グッドストラプス』も好きだったので、色々好きな要素が重なり楽しみにしていた映画。 原作の序盤にあって、自分が引き込まれた要因の一つだった、華子の惨めなまでの婚活への執着と空振りっぷりのおかしさであるとか、美紀と逸子が意気投合して幸一郎のことをわりかしボロクソに言ったりとか、男の酷い部分に描写が割かれていたのが結構省略されていた分、幸一郎に対する眼差しが全体的に優しいものになっていたのが印象的だった。
その辺の話で言うと、幸一郎を演じるのが高良健吾と知った時は、なんとなく可愛げとか愚直さがあり感情が前に出てきやすい二枚目のような印象だったので、原作の幸一郎の表面上の優しさはともかくとして、心無さや気持ちの読めなさのような点ではピンと来ていなかったのだけど、そのあたりの冷たい部分よりも、家柄の磁場が強すぎる故の自分の人生に対する諦めが見える場面であったり、美紀といる時や、終盤離婚して自立するようになった華子と対峙する場面になって見せる、人間らしい部分とか温かい印象は高良健吾ならではだったような気がする。 主演の門脇麦と水原希子のコントラストもよかった。雑に女同士の友情みたいな事にならなそうな感じというか。 また、映像にしてみると原作以上に、自我がなかなか芽を出さない華子よりも、あのルックスで終始しゃんとして過去の苦労もわかりやすい美紀の方がだいぶ主人公感があって、物語の中の比重が逆転しちゃうのではという気さえしたけど、全然大丈夫だった。にしても希子さんの華奢な腕よ…
あと自分から見れば、こんなハイクラスの階級の気持ちも地方出身の人の気持ちもわからないけど、東京出身で実家住まいをし続けているという部分では、東京で生まれて東京から出ることのない人間の、地方におけるそうした人間との本質的な変わらなさが暴かれているのが、ドキッともするしスカッともする不思議な感触。
今はなき酔の助とか、変わっていく東京の姿が収められていて、また時間をおいて見ると色々感慨深くなるのだと思う。